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くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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瑛太って人はなかなかの演技派だなあ。最近特に感じるんだけど、日本の若手俳優って決してレベル低くないですね。

住民1500人。その半分が老人という過疎の村で、たった一人の医者として住民の健康を守ってきた伊野(笑福亭鶴瓶)。そこに研修医として訪れた相馬(瑛太)は、伊野と住民逹の絆を目の当たりにして感動し、研修を終えたらこの村で働きたいと伊野に告げる。しかしそこで伊野から返って来たのは、相馬にとって意外な言葉だった。


予告を一度でも観ればオチが分かる映画なので、どうするんだろうと思っていたが。いやー、実際私がオチだと踏んでいたオチはオチでも何でも無かったよ。やられた!
この映画が描きたかったのはそのオチ(らしきもの)の先にある事だった。

前半の、あまりによくできた「田舎の村で働く医師と住民の心暖まる交流」が浮いてないのも凄い。これは絶妙に挿入された笑いどころと、笑福亭鶴瓶の演技とも思えない演技(褒めている)のおかげだ。それを脇で支える瑛太、余貴美子も良い。


人間は出来るだけロマンチックな展開を求める。
ロマンチックな展開とは、型通りの展開だ。型通りの展開とは、つまり人を裏切らない展開である。
人々が「こうであってほしい」と思う展開である。

「こうであってほしい」を「こうである」と信じる為に、人は日々さまざまな事を無意識に視界から外している。それを知ったら「こうではない」事に自分が気付かねばならないから。

その為には、懺悔の声をさえ遮るのだ。意識的にしろそうでないにしろ。
罪悪感と無力感と、重責に押し潰されそうになっている人の懺悔の声にさえ耳を塞ぐのだ。
出来上がるのは共犯者だ。主犯を助けて共犯者となるのではなく、主犯に罪を押し当てがうことで共犯者となる人々である。

「誰も、話を聞いていない…」

絶望した刑事の呟きに、観ている我々もまた胸を貫かれる。
観客もいつの間にか共犯者になっていたのだ。
あの幸せな日常を、少しでも長く見ていたいと願ったんだから。
白々しくも幸せな 偽物の日常を。

伊野が診療所から逃げ出した後、駅で実家に電話をかけるシーンがある。母親に父親を電話口に出してくれと頼むと、母親は「もう貴方だと分からないわよ」と言う。痴呆が進んでいるらしい。伊野が分かってる、と言うと 暫くして父親の声が聞こえる。


もしもし

父さん オサムです

そうですかぁ

父さん ごめんなさい
父さんのペンライト 盗んだの僕や

そうですかぁ

父さんのペンライト 盗んだの僕や

そうですかぁ…


漸く、伊野は懺悔を聞いてくれる相手を見出す。
電話口の向こうに。
ボケた父親に。


清々しくも人間の本質に迫った、良い映画だ。何より見終わった観客に自問させる力を持っている。
登場人物の誰もが少しずつ卑怯で歪んでるんだけど、主要キャスト逹はその歪みを何とも淡々とリアルに演じていた。瑛太は特に上滑りな理想主義とこずるい現実主義の、その合間にある一瞬を見事に視線の演技で表現していた。
必見です。オススメ!!


関連エントリ
瑛太が「EITA」だった時の事→やっぱ良いわ 「青い春」

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無題
こんばんは、
TB&コメ失礼します。

いろいろと考えさせられる映画でしたよね、、、
私は鶴瓶さんの演技が新鮮すぎて、そっちばっかり見てたんですが、
瑛太くんのその微妙な心理面を表現した演技も見所ですよね。
みるく 2009/08/19(Wed)22:35:32 編集
うおお!
いらっしゃいませ!
TBコメント両方大歓迎ですー
いやあ良い映画でしたね。
なんというか端正な、形の整った良質な映画。という感じ。
「ゆれる」も観ましたが、個人的には「ディア・ドクター」の方がすきですかねー。両方良いんですけどね。
この映画、始まり方も印象に残っています。
薄暗がりの中を自転車のランプがゆっくり坂を下りていくロングのカットが綺麗で。
映画のファーストカットって大事ですね。

釣瓶の演技はもはや演技ですらないようなナチュラルさに満ちていてグーでしたね。あと八千草薫の「しょうがない 見せてやるか」もキュートで好きでした!
瑛太も良かったですねー。
あの軽薄さがリアルで。

実は以前、そちらのブログを拝見したことがあったので、TBとコメントまことに嬉しゅうござんした。
アンジー姐さん御用達のパックは使い心地いかがですか?(気になっていました・・)
またお邪魔させていただきますね!
ありがとうございました!
しる 2009/08/20(Thu)00:50:40 編集
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