くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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高岡蒼甫が出ていたと聞いて「うそお」と思いつつ再見。
うえええ雪男かあ!全然気付かなかった!
幼なじみの九條と青木。カリスマ性を持った九條に憧れと劣等感を抱いていた青木は、九條が校内での権力争いに全く興味を持たない事を歯がゆく思っていた。そんな二人の関係が、ある些細な衝突をきっかけに破綻する。次の日、屋上でサボる九條が見たのは 後輩を従え、眉を剃り、髪を短く切った 別人のような青木だった。
原作は松本大洋の短編集「青い春」。この内、収録作の「しあわせなら手をたたこう」をベースに、「ピース」「鈴木さん」「夏でポン!」を混ぜて一つの物語としたのが映画「青い春」です。
ちなみに漫画「青い春」には「リボルバー」という名作が収録されているが、これは「もう一つの青い春」としてDVD化されている(ロードショーはされていない筈)。作品としては色々残念な出来なので、あまりオススメはしない。
んで「青い春」の方だけど。
松本大洋のヤンキー漫画にはいつも何かしらの閉塞感が付きまとう。部活や勉強にやりがいを見い出せない、或いは必死に打ち込んだものの結果を出せなかった学生の持つ、どうしようもない逃げ場の無さがまずある。そこに住む彼らは、もはや喧嘩さえしない。思えば「青い春」収録作の中で、不良的な喧嘩(学生同士の殴り合い)が描かれていた作品は一つもなかったかもしれない。「ファミリーレストランは僕らのパラダイスなのさ!」ぐらいか。
で、この映画はそんな原作の空気を見事に再現している。
部活も勉強も喧嘩もせず、彼らは屋上で手を叩く「ベランダゲーム」で暇を潰す。
【ベランダゲームのルール】
1、屋上の手すりの外側に立ち、手すりを両手で握る
2、「いーち」という掛け声に合わせ、手を一回叩いてまた手すりを掴む
3、「にー」という掛け声に合わせ、手をニ回叩いてまた手すりを掴む
4、繰り返し
このゲームで新記録を出した者が学校の番を張る事になっている。で、九條は新記録となる八回をマークして見事番長になるのだが、彼自身はめんどくさそうであまり乗り気ではない。
その様子を傍で見ている青木は、何でだよ。と思ってる。
一方、雪男は族の仲間が幹部や先輩にへこへこしているのを冷めた目で見ている。
彼が自分に対しては居丈高に振る舞いながら、しゃがんで煙草を吸う様を立ったまま見下ろしている。
野球部の木村は甲子園に行くという夢に破れ、後輩の一年坊と部室で毎日麻雀をする日々を送っている。「麻雀ばっか強くてもな 野球で負けちゃしょうがねえよな。」
それらの、形を結ぶ寸前で長いこと燻っている火種とも言うべきものが 閉塞感に満ちた校舎のそこここに落ちている。それらは、側から見れば本当に何でもない事で ある日ぱちんと弾ける。
弾ける瞬間の疾走感と、弾けてしまった後の顛末を永久に持て余す少年達を、この映画はよく描いていると思う。将来のプランが見付けられず、今現在情熱を注ぐものも無い彼らが、後の事など全く考えていないが故の暴走、逃避でさえない奇行に走るその一瞬を そしてその一瞬に至るまでの、退屈で生ぬるい それなりに愛しい日々を丁寧に見せる。
役者で際立つのは青木を演じた新井浩文。彼は最近良く映画に出ているようで、「ノン子36歳(家事手伝い)」「ぐるりのこと。」「劔岳~点の記」などで見掛けた。特に「ぐるりのこと。」での快演が印象的。
それとやはり雪男を演じた高岡蒼甫(下写真)がインパクトとして大きい。ビジュアルが現在の彼とかなり違う(今より白くて華奢だ)上に眼鏡をかけているので、相当illな雰囲気が良く出ている。サナトリウムか刑務所が似合いそうだ。
演技が特別上手いという訳ではないが、雰囲気は出ている。
![20051103021439.jpg](http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7f1be5a0fed7ab44ddd8e6a17783effd/1250229478?w=250&h=134)
主人公の松田龍平も、いつも通り巧拙で語る事が無意味な「佇まい演技」で 世界観に溶け込んでいる。松田龍平は非常に作品を選ぶ役者だが、本作との相性はなかなか良い方だろう。
あと、もう一つ驚いたのは瑛太が出ていたこと。出番は少ないが印象的な役柄を演じている。クレジットを見たら「EITA」とアルファベット表記だった。そうかあ漢字になる前かあ…
その他にも、塚本高史や忍成修吾など、チラチラと今有名になった人達が出ていて楽しい。
本作は数多ある漫画原作映画の中で、また数多ある不良映画の中で、かなり上位に入るクオリティ。だと思う。
松本大洋が確立したドライな暴力描写、スナップ的に情景を切り取って見せる手法、そして鮮やかなクライマックス表現を見事に再現している。「しあわせなら手をたたこう」に関して言えば、映画のラストが原作のそれを凌駕したとさえ言えるだろう。
青春映画珠玉の名作。オススメ!
関連エントリ
8年後、そこには名前を漢字表記に改めた瑛太の姿が!
→共犯者たちよ! 「ディア・ドクター」
4年後、そこには元気に包丁を棒切れに持ち替えた雪男の姿が!
→爽快だ! 「パッチギ!」
私この役者さんはほんっと絶対大物になると思うんだよ
→2008年は邦画の当たり年 「ぐるりのこと。」
あっ よく考えたら九條と青木が再共演を果たしている。
→ああこういう事だわなあ 「劔岳~点の記」
うえええ雪男かあ!全然気付かなかった!
幼なじみの九條と青木。カリスマ性を持った九條に憧れと劣等感を抱いていた青木は、九條が校内での権力争いに全く興味を持たない事を歯がゆく思っていた。そんな二人の関係が、ある些細な衝突をきっかけに破綻する。次の日、屋上でサボる九條が見たのは 後輩を従え、眉を剃り、髪を短く切った 別人のような青木だった。
原作は松本大洋の短編集「青い春」。この内、収録作の「しあわせなら手をたたこう」をベースに、「ピース」「鈴木さん」「夏でポン!」を混ぜて一つの物語としたのが映画「青い春」です。
ちなみに漫画「青い春」には「リボルバー」という名作が収録されているが、これは「もう一つの青い春」としてDVD化されている(ロードショーはされていない筈)。作品としては色々残念な出来なので、あまりオススメはしない。
んで「青い春」の方だけど。
松本大洋のヤンキー漫画にはいつも何かしらの閉塞感が付きまとう。部活や勉強にやりがいを見い出せない、或いは必死に打ち込んだものの結果を出せなかった学生の持つ、どうしようもない逃げ場の無さがまずある。そこに住む彼らは、もはや喧嘩さえしない。思えば「青い春」収録作の中で、不良的な喧嘩(学生同士の殴り合い)が描かれていた作品は一つもなかったかもしれない。「ファミリーレストランは僕らのパラダイスなのさ!」ぐらいか。
で、この映画はそんな原作の空気を見事に再現している。
部活も勉強も喧嘩もせず、彼らは屋上で手を叩く「ベランダゲーム」で暇を潰す。
【ベランダゲームのルール】
1、屋上の手すりの外側に立ち、手すりを両手で握る
2、「いーち」という掛け声に合わせ、手を一回叩いてまた手すりを掴む
3、「にー」という掛け声に合わせ、手をニ回叩いてまた手すりを掴む
4、繰り返し
このゲームで新記録を出した者が学校の番を張る事になっている。で、九條は新記録となる八回をマークして見事番長になるのだが、彼自身はめんどくさそうであまり乗り気ではない。
その様子を傍で見ている青木は、何でだよ。と思ってる。
一方、雪男は族の仲間が幹部や先輩にへこへこしているのを冷めた目で見ている。
彼が自分に対しては居丈高に振る舞いながら、しゃがんで煙草を吸う様を立ったまま見下ろしている。
野球部の木村は甲子園に行くという夢に破れ、後輩の一年坊と部室で毎日麻雀をする日々を送っている。「麻雀ばっか強くてもな 野球で負けちゃしょうがねえよな。」
それらの、形を結ぶ寸前で長いこと燻っている火種とも言うべきものが 閉塞感に満ちた校舎のそこここに落ちている。それらは、側から見れば本当に何でもない事で ある日ぱちんと弾ける。
弾ける瞬間の疾走感と、弾けてしまった後の顛末を永久に持て余す少年達を、この映画はよく描いていると思う。将来のプランが見付けられず、今現在情熱を注ぐものも無い彼らが、後の事など全く考えていないが故の暴走、逃避でさえない奇行に走るその一瞬を そしてその一瞬に至るまでの、退屈で生ぬるい それなりに愛しい日々を丁寧に見せる。
役者で際立つのは青木を演じた新井浩文。彼は最近良く映画に出ているようで、「ノン子36歳(家事手伝い)」「ぐるりのこと。」「劔岳~点の記」などで見掛けた。特に「ぐるりのこと。」での快演が印象的。
それとやはり雪男を演じた高岡蒼甫(下写真)がインパクトとして大きい。ビジュアルが現在の彼とかなり違う(今より白くて華奢だ)上に眼鏡をかけているので、相当illな雰囲気が良く出ている。サナトリウムか刑務所が似合いそうだ。
演技が特別上手いという訳ではないが、雰囲気は出ている。
主人公の松田龍平も、いつも通り巧拙で語る事が無意味な「佇まい演技」で 世界観に溶け込んでいる。松田龍平は非常に作品を選ぶ役者だが、本作との相性はなかなか良い方だろう。
あと、もう一つ驚いたのは瑛太が出ていたこと。出番は少ないが印象的な役柄を演じている。クレジットを見たら「EITA」とアルファベット表記だった。そうかあ漢字になる前かあ…
その他にも、塚本高史や忍成修吾など、チラチラと今有名になった人達が出ていて楽しい。
本作は数多ある漫画原作映画の中で、また数多ある不良映画の中で、かなり上位に入るクオリティ。だと思う。
松本大洋が確立したドライな暴力描写、スナップ的に情景を切り取って見せる手法、そして鮮やかなクライマックス表現を見事に再現している。「しあわせなら手をたたこう」に関して言えば、映画のラストが原作のそれを凌駕したとさえ言えるだろう。
青春映画珠玉の名作。オススメ!
関連エントリ
8年後、そこには名前を漢字表記に改めた瑛太の姿が!
→共犯者たちよ! 「ディア・ドクター」
4年後、そこには元気に包丁を棒切れに持ち替えた雪男の姿が!
→爽快だ! 「パッチギ!」
私この役者さんはほんっと絶対大物になると思うんだよ
→2008年は邦画の当たり年 「ぐるりのこと。」
あっ よく考えたら九條と青木が再共演を果たしている。
→ああこういう事だわなあ 「劔岳~点の記」
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