くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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どいつもこいつも花に期待しすぎ
(前エントリ題参照のこと)
今回も長くなりそうなので続きは続きに。
前回漸く怖いメリーベルに触れた折
と書きましたが
![merrybel.jpg](http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7f1be5a0fed7ab44ddd8e6a17783effd/1205063224?w=250&h=117)
それにしたってこれはちょっと怖すぎると思う。
左目ビカーなってるし。
まあこの顔は「エヴァンズの遺書」最後の方で本当に怖いのはこのシーンに到達するまでのメリーベルなんですよ。ちょっと書いてくので見てってください(チョイナチョイナ)
エドガーの拾われたエヴァンズ家@リトル・ヘヴンには、毎年冬になるとロンドンに住んでいるヘンリーの甥と姪がやってくるようです。メリーベルはエドガーを連れ戻す為、甥のアーネストと姪のリンダに接触し、友人として同行しエヴァンズ家に潜入するという大胆な手段に。しかし久しぶりに会ったエドガーはすっかり記憶を失い赤ンボ(原文ママ)のようになっており、ショックを受けて泣き出すメリーベルを見て勝手に「メリーベルはエドガーに一目ぼれしたのだ」と思い込み応援するとか言い出すリンダ。
盛り上がるリンダを冷めた目で見るメリーベルがとても印象的。
![linda.jpg](http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7f1be5a0fed7ab44ddd8e6a17783effd/1205065769?w=243&h=250)
説明すんのめんどくさいからいいや って顔のメリーベル
黒い。こいつは黒いぜ。
初期ドラえもんみたいな顔してやがる。
ともあれかくして手に入れた「エドガーに片思いしてる乙女」というポジションを、メリーベルは最大限利用して白銀のリトル・ヘヴンをしばしその掌上でもって玩ぶのです。
まず手始めに召使のエレン。彼女はヘンリー伯爵に片思いをしていますが、彼がまだ亡くなった妻を深く愛している事を知っている為、自分の思いは胸に秘めたまま伯爵に仕えている健気な女性です。そんな彼女にメリーベルは「恋のクスリ」だとしれっと嘘をつき薔薇の香料を渡します(薔薇の香料はバンパネラにとってのカロリーメイトみたいなもんで、手早くエナジイを摂取できるのです)。さらにただのおとぎ話でしょう、と言うエレンに「おとぎ話でもいいわ わたしエドガーが・・・お願いよ」とねだって、皆に出すお茶にこの薔薇の香料を入れてもらうメリーベル。頬を染めつつ薔薇の紅茶を意中の人にサーブするエレンそっちのけで、ピアノを弾くエドガーを見守りながら「早く健康になって そうすればきっと気持ちもはっきりとしてくるわ わたしのことも思い出すわ」と心の中で語りかけるメリーベルを見てるともう「お前は鬼か」としか思えませんね。まあ似たようなもんですが。
さて。エドガーはエドガーで相変わらず記憶喪失ではありますが、全く思い出していないわけではなく、何かの拍子に記憶が戻りそうになったりならなかったりで辛い事もあり、エレンの前で訳も分からないまま涙します。エレンはそんなエドガーを励まそうと、銀の十字架をプレゼント。
![ellen.jpg](http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7f1be5a0fed7ab44ddd8e6a17783effd/1205068215?w=250&h=226)
全く悪気は無いエレン
エドガーはバンパネラなのに何故十字架を着けられても平気なのかというと、バンパネラ達が恐れるのは十字架や聖書、銀そのものではなく そこに含まれている人々の信仰だから。要するに「あ、十字架だ、怖い」ではなくて「あ、あれは人々の信仰の対象である十字架だ、我々を駆逐するものの象徴だ、怖い」であるわけで、この恐怖は極めて自覚的なもの、つまり自覚しなければおそるるに足らないのです。この時のエドガーは自分がバンパネラであるという自覚を手放しているため、十字架が恐怖の対象である、という自覚もないわけですね。多分。
そんなわけで天敵である十字架を首に提げてご機嫌のエドガー。それを見たメリーベルは恐怖し、思い悩みます。愛するエドガーに触れられない、近づけない、ひいては記憶を取り戻させる事も出来ないというのですから、メリーベルにとっては一大事。そこに何も知らない可哀相なアーネストが登場します。彼は初めて会った時からメリーベルに一目ぼれした報われない少年で、この時もふさぎ込んだメリーベルを元気付けるため、雪の結晶をお土産に現れたのです。メリーベルにとっては絶好の獲物。「笑ってるほうが素敵だよ」と言う彼にメリーベルは「・・・わたし・・・・・・雪の結晶よりほしいものがあるの アーネスト」「エドガーの銀の十字架よ」「そうよ ほしいのよ わたしのたのみよ だめ?・・・・・・わたしを愛してるって言ったのはうそ?」
何という脅迫。
まともな人間ならいかに少年といえどこんな台詞を聞いた日には百年の恋も冷めようというところですが
![arnest.jpg](http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7f1be5a0fed7ab44ddd8e6a17783effd/1205069291?w=250&h=67)
「メリーベル きみのためなら きみがそれをほしいと言うのならぼくは気がくるったって
女王陛下の髪飾りだってエデンのリンゴだって!」
しまった。こいつは本物のばかだ。
とんだ盲目野郎のアーネストにとって常識などちり紙にも等しいのです。読者にはそれが分からんのですよ。この澄んだ目を見て下さい。これは間違いなく何も考えていない目。
まあ、彼はメリーベルの言う通り、エドガーから十字架を強奪しようとした結果大騒ぎになりヘンリーに大目玉食らったりもするのですが、それは彼がばかだから仕方が無いのです。決して腹黒いメリーベルのせいなどではないのです。そんな事言う奴はどこのどいつだ。
そして再び訪れた十字架奪還のチャンス。アーネストはエドガーと一緒に馬を走らせる事になります。盲目のアーネストがその好機を逃す筈はありません。十字架をエドガーの首からむしり、引き千切り…「やった!」そう叫んだ次の瞬間、彼ははたと目を見張ります。――エドガーがいない。
不意に周囲を見渡して、アーネストは気付きました。エドガーが、氷の張りかけた湖に落ちたこと。その水面に、死人の如く青い頬を浸していること。そして何もできず立ちすくんでいる自分を、あの青い目で見上げ 確かに笑ったこと。
悲鳴を上げる彼の首に縋りつき、エドガーは牙を立てましたが アーネストは何とかエドガーから逃げて馬を走らせ逃げ、ようよう館に辿りつくなり 面々にまくしたてるのでした。
――奴は人間じゃない!バンパネラだ、僕の首に噛み付いたもの!!
騒然となる館の中。皆が口々に何かをわめきたてる中で ひとつだけ、異質な 柔らかい、楽しげな声が響きます。
――首にかみついてきた―――?では記憶が…もどったんだわ もう待つこともないわ わたしつれていけるわ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
果たして、まあ結果的に、恋愛バカアーネストの働きによりエドガーは記憶を取り戻し、メリーベルは左目ビカーっとさせつつエドガーを迎えに行き、エヴァンズ家の善良な人たちを恐怖のるつぼに叩き落した後、薔薇の花びら散らしつつどっかへ飛んでいくのでした。ほんと・・何なんだろうねこの兄妹は・・・
しかしそれもこれも全部メリーベルとエドガーの深い絆、というよりは執着、執念、そういったものの表面化した結果である、ということで読んでみるとなかなか味わい深いものがあります。いつもは徹底して「エドガーに守られる者」という役割を忠実に演じてきたメリーベルが、エドガーの一大事とあって本来の腹黒さを存分に発揮し王子様を救うために奔走する。というイレギュラーな筋立ても痛快。是非ご縁あらばご一読を。
それにしてもエヴァンズ家の男達を時系列順に並べてオズワルド→ヘンリー→ロジャーと比べてみると、後世になるにしたがって男前度が下がっているのがありありと分かって悲しい。「ぼくの子孫じゃこのていどか」(エドガー)ってな!
(前エントリ題参照のこと)
今回も長くなりそうなので続きは続きに。
前回漸く怖いメリーベルに触れた折
記憶を失い赤ん坊のようになってしまったエドガーを助ける為に現れたメリーベルが常の彼女と違っていたとしても、その眼差しに まるでエドガーのような鋭い光を宿していたとしても、だから訝るには足らないのだ。 |
と書きましたが
それにしたってこれはちょっと怖すぎると思う。
左目ビカーなってるし。
まあこの顔は「エヴァンズの遺書」最後の方で本当に怖いのはこのシーンに到達するまでのメリーベルなんですよ。ちょっと書いてくので見てってください(チョイナチョイナ)
エドガーの拾われたエヴァンズ家@リトル・ヘヴンには、毎年冬になるとロンドンに住んでいるヘンリーの甥と姪がやってくるようです。メリーベルはエドガーを連れ戻す為、甥のアーネストと姪のリンダに接触し、友人として同行しエヴァンズ家に潜入するという大胆な手段に。しかし久しぶりに会ったエドガーはすっかり記憶を失い赤ンボ(原文ママ)のようになっており、ショックを受けて泣き出すメリーベルを見て勝手に「メリーベルはエドガーに一目ぼれしたのだ」と思い込み応援するとか言い出すリンダ。
盛り上がるリンダを冷めた目で見るメリーベルがとても印象的。
説明すんのめんどくさいからいいや って顔のメリーベル
黒い。こいつは黒いぜ。
初期ドラえもんみたいな顔してやがる。
ともあれかくして手に入れた「エドガーに片思いしてる乙女」というポジションを、メリーベルは最大限利用して白銀のリトル・ヘヴンをしばしその掌上でもって玩ぶのです。
まず手始めに召使のエレン。彼女はヘンリー伯爵に片思いをしていますが、彼がまだ亡くなった妻を深く愛している事を知っている為、自分の思いは胸に秘めたまま伯爵に仕えている健気な女性です。そんな彼女にメリーベルは「恋のクスリ」だとしれっと嘘をつき薔薇の香料を渡します(薔薇の香料はバンパネラにとってのカロリーメイトみたいなもんで、手早くエナジイを摂取できるのです)。さらにただのおとぎ話でしょう、と言うエレンに「おとぎ話でもいいわ わたしエドガーが・・・お願いよ」とねだって、皆に出すお茶にこの薔薇の香料を入れてもらうメリーベル。頬を染めつつ薔薇の紅茶を意中の人にサーブするエレンそっちのけで、ピアノを弾くエドガーを見守りながら「早く健康になって そうすればきっと気持ちもはっきりとしてくるわ わたしのことも思い出すわ」と心の中で語りかけるメリーベルを見てるともう「お前は鬼か」としか思えませんね。まあ似たようなもんですが。
さて。エドガーはエドガーで相変わらず記憶喪失ではありますが、全く思い出していないわけではなく、何かの拍子に記憶が戻りそうになったりならなかったりで辛い事もあり、エレンの前で訳も分からないまま涙します。エレンはそんなエドガーを励まそうと、銀の十字架をプレゼント。
全く悪気は無いエレン
エドガーはバンパネラなのに何故十字架を着けられても平気なのかというと、バンパネラ達が恐れるのは十字架や聖書、銀そのものではなく そこに含まれている人々の信仰だから。要するに「あ、十字架だ、怖い」ではなくて「あ、あれは人々の信仰の対象である十字架だ、我々を駆逐するものの象徴だ、怖い」であるわけで、この恐怖は極めて自覚的なもの、つまり自覚しなければおそるるに足らないのです。この時のエドガーは自分がバンパネラであるという自覚を手放しているため、十字架が恐怖の対象である、という自覚もないわけですね。多分。
そんなわけで天敵である十字架を首に提げてご機嫌のエドガー。それを見たメリーベルは恐怖し、思い悩みます。愛するエドガーに触れられない、近づけない、ひいては記憶を取り戻させる事も出来ないというのですから、メリーベルにとっては一大事。そこに何も知らない可哀相なアーネストが登場します。彼は初めて会った時からメリーベルに一目ぼれした報われない少年で、この時もふさぎ込んだメリーベルを元気付けるため、雪の結晶をお土産に現れたのです。メリーベルにとっては絶好の獲物。「笑ってるほうが素敵だよ」と言う彼にメリーベルは「・・・わたし・・・・・・雪の結晶よりほしいものがあるの アーネスト」「エドガーの銀の十字架よ」「そうよ ほしいのよ わたしのたのみよ だめ?・・・・・・わたしを愛してるって言ったのはうそ?」
何という脅迫。
まともな人間ならいかに少年といえどこんな台詞を聞いた日には百年の恋も冷めようというところですが
「メリーベル きみのためなら きみがそれをほしいと言うのならぼくは気がくるったって
女王陛下の髪飾りだってエデンのリンゴだって!」
しまった。こいつは本物のばかだ。
とんだ盲目野郎のアーネストにとって常識などちり紙にも等しいのです。読者にはそれが分からんのですよ。この澄んだ目を見て下さい。これは間違いなく何も考えていない目。
まあ、彼はメリーベルの言う通り、エドガーから十字架を強奪しようとした結果大騒ぎになりヘンリーに大目玉食らったりもするのですが、それは彼がばかだから仕方が無いのです。決して腹黒いメリーベルのせいなどではないのです。そんな事言う奴はどこのどいつだ。
そして再び訪れた十字架奪還のチャンス。アーネストはエドガーと一緒に馬を走らせる事になります。盲目のアーネストがその好機を逃す筈はありません。十字架をエドガーの首からむしり、引き千切り…「やった!」そう叫んだ次の瞬間、彼ははたと目を見張ります。――エドガーがいない。
不意に周囲を見渡して、アーネストは気付きました。エドガーが、氷の張りかけた湖に落ちたこと。その水面に、死人の如く青い頬を浸していること。そして何もできず立ちすくんでいる自分を、あの青い目で見上げ 確かに笑ったこと。
悲鳴を上げる彼の首に縋りつき、エドガーは牙を立てましたが アーネストは何とかエドガーから逃げて馬を走らせ逃げ、ようよう館に辿りつくなり 面々にまくしたてるのでした。
――奴は人間じゃない!バンパネラだ、僕の首に噛み付いたもの!!
騒然となる館の中。皆が口々に何かをわめきたてる中で ひとつだけ、異質な 柔らかい、楽しげな声が響きます。
――首にかみついてきた―――?では記憶が…もどったんだわ もう待つこともないわ わたしつれていけるわ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
果たして、まあ結果的に、恋愛バカアーネストの働きによりエドガーは記憶を取り戻し、メリーベルは左目ビカーっとさせつつエドガーを迎えに行き、エヴァンズ家の善良な人たちを恐怖のるつぼに叩き落した後、薔薇の花びら散らしつつどっかへ飛んでいくのでした。ほんと・・何なんだろうねこの兄妹は・・・
しかしそれもこれも全部メリーベルとエドガーの深い絆、というよりは執着、執念、そういったものの表面化した結果である、ということで読んでみるとなかなか味わい深いものがあります。いつもは徹底して「エドガーに守られる者」という役割を忠実に演じてきたメリーベルが、エドガーの一大事とあって本来の腹黒さを存分に発揮し王子様を救うために奔走する。というイレギュラーな筋立ても痛快。是非ご縁あらばご一読を。
それにしてもエヴァンズ家の男達を時系列順に並べてオズワルド→ヘンリー→ロジャーと比べてみると、後世になるにしたがって男前度が下がっているのがありありと分かって悲しい。「ぼくの子孫じゃこのていどか」(エドガー)ってな!
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