くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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完成披露試写会で主演の渡辺謙が「この映画撮るのがものすげー大変だったんだよう」と泣いた事で「そうかそんなに凄い映画なのか!」というベクトルではなく「よっぽどJALがえげつない嫌がらせをしたのであろうなあ」という印象だけを強く観客に持たせる事に成功した意欲作(偏見です)。
原作は毎回毎回映像化される度に「実在の企業や出来事とは一切関係ありません」と画面にでかく文字を出す癖に事件名や企業名が笑っちゃうくらいそのまんまなあまり、「お前隠す気ねーだろ」でお馴染みの山崎豊子。
本作品では航空会社の社員で、労働組合の会長をしていた事で役員から目をつけられ、僻地に飛ばされまくった挙げ句帰国するなり起きた御巣鷹山ジャンボ機墜落事故の遺族世話係を押し付けられた男の半生を描いている。
まあ昨今世に溢れている「なんちゃって社会派」に比べればしっかり骨太な作りだし、時代考証にも隙がなくて良いと思います。
ただこの主人公である恩地という人物が少々アクが無さ過ぎる。つーか良い人過ぎる。
ていうか、どっちかと言うと恩地をあからさまに目の敵にしながら、自分はあくまでも出世だけを見据えてのしあがって行く行天の方がキャラとして興味深い。
まあそんな感じの決して悪くない映画だと思うんですが、いかんせん出演者が豪華過ぎて、そちらにばかり目が行ってしまうという欠点が。
墜落する飛行機のパイロットに小日向文世、管制官に長谷川初範、乗客の一人に東幹久。政治家には小野武彦、柴俊夫、総理大臣に加藤剛(!)。余談ですが加藤剛が物凄く痩せていて暫く誰だか分からなかった。ご病気でもされているのかしらと、思わず心配になりました。
個人的に先日胃ガンで亡くなった山田辰夫(この作品が遺作だそうで)と小林捻持が全く違うシーンではありますが出演していて、おお狂い咲きサンダーロードコンビ…としみじみしました。個人的に好きな映画ではありませんが、やはり何かにつけ思い出す作品である事は確かです。
あと本当にちらっと上川隆也が出ていて「白い巨塔」つながりの強さを感じたり、恩地の息子が物凄く久しぶりの柏原崇だったり、松雪泰子と木村多江という薄幸美人対決最終決戦のカードが人知れず組まれていたりして、豪華でありながら何処か地味な、味のあるキャスティングが面白く、その面白さにストーリーが負けてしまっているという、良いんだか悪いんだか分かんない感想に終始いたしました。
とはいえ、こういう力強い、何かと障害も多いであろう作品の牙を削ぐ事無く完成させるには、観る側の想像も及ばない苦労もあっただろうし、その事に関しては冒頭で触れた渡辺謙号泣の意味を決して邪推するつもりはありません。
やや長いのが難点ではありますが、エンドロールの最後に出てきた「この作品が、何らかの形で航空機の安全・安心を促進するものとなる事を祈る」は割と泣かせますね。
今時珍しい日本映画の力作です。まあまあオススメ。
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