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くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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三池祭が終わったので、他の映画について色々。
つってもこれは今日やっと観たもの。上映中もずっと観たかったんだけど、残念ながら機を逃し続け、さらにレンタル屋に並んでからもしばらく意図的に機を逃し続け、新作のラベルが外れて漸く手に取ったという まあ要するに私がケチだという話です(だって新作高いもん)。

で、あらすじ。

落ち目のアクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダム(本人)。48歳になった今ではアクションも思うように行かず、年下の映画監督からは全く敬意を払われず、私生活では離婚した妻と娘の養育権を取り合っているが、相手方の弁護士には彼が出演した映画のDVDを並べられ、「こんな非人道的な映画にばかり出ている男に子どもを育てる資格など無い!」と攻撃される。そんなある日、弁護士から「小切手が不渡りになった。今日の昼までに振込みが無かった場合、僕は君の弁護から降りる」と言われたヴァン・ダムは、慌てて金を下ろす為郵便局に入る。そこに強盗が、人質を取って立てこもっているとはつゆ知らず…


実はジャン=クロード・ヴァン・ダムの出演している映画を、本作以外1本も観たことが無い。
本人についても、引田天功と噂があった人だよね?ぐらいのイメージ。全くファンではない。
それでもこの映画の題名と軽いあらすじを聞いただけで「な、なんて面白そうなんだ」と興奮してしまったのは、ひとえに本人=役柄というメタ的な面白さと、ヴァン・ダムという役者の「何か知らんけど多分凄く強いってだけで俳優としては相当つぶしの効かない人」という分かりやすいイメージ、それとあらすじを聞いただけで大体どうなるか分かってしまう展開の単純さが、非常にデフォルメされたヴァン・ダムというキャラクター性にぴったりとフィットしていたからだと思う。落ち目だけど強いアクション俳優が、実生活で強盗騒ぎに巻き込まれる。
こ、これは間違いなく映画的名誉挽回フラグ!

落ち目のヴァン・ダム→強盗倒す→人気復活

言ってみれば「グラン・トリノ」のような。「レスラー」のような。落ちぶれた男たちが、下り坂の途中でふいと火を入れられ再び燃えたぎる。みたいなそういう展開だろう間違いなく。と思って観る訳ですよ。普通そうでしょう。

ところがそうはならないんですなあ。

ヴァン・ダムが自分自身に対して極めて客観的な視線を持っていることは確かである。強盗一味に映画マニアがいるんだけど、その男と交わす会話が完全に自虐ネタ。

「次回作、ネットで見たぜ。紫の何とかってやつ。あれはいつ公開なんだ?」
「いや、あれはなしになった。主演を他の役者に取られたんだ」
「マジかよ!そいつ誰だ?」
「(スティーブン・)セガール」
「…あー…でもあんな奴よりあんたのが100倍良いのに」
「仕方ない。あいつは今回ポニーテールを切ったらしいからな」


セガールのポニーテールがやけに強調されていて笑った。
ある程度ヴァン・ダムのファンであるはずの男が次回作の題名を覚えていないというところも自虐的で良い。ヴァン・ダムという役者に対して世の中が持っている興味の薄さを絶妙に表現している。


「ジョン・ウーは恩知らずだよな。無名の時はあんたが映画に出て盛り上げてやったのに、売れたとたんあんたを起用しなくなった。あんたがいなけりゃ、あいつ今もきっと香港でハト撮ってたぜ!」
「いや…しかし「フェイス/オフ」は傑作だった」
「それにもあんたを起用しなかったじゃないか」


なんて会話もありました。ハトwwwwwwwwwwwまたハトに突っ込まれてるジョン・ウーwwww


しかし、ここまでヴァン・ダムというキャラをデフォルメしておきながら、映画の途中で突然ヴァン・ダムは劇中から抜け出てナレーションを挿入する。不意に舞台は郵便局内部から、後ろにライトや小道具が無造作に置かれたスタジオに変わる。そこでヴァン・ダムは、映画を見ている観客に向けて「これは映画ではない」と宣言するのだ。

そして強盗事件は、嘘のようにあっけなく収束する。ヴァンダムは大した活躍もしないまま、予想外の展開で物語は進む。

これが仮に、ヴァン・ダムが強盗一味を華麗に倒し、人質を解放し、そして野次馬の前で両手を上げて歓声を一身に受ける、そんな終わり方をする映画だったら、それはおそらく観客が望んだ結末だったろうし、映画的なクライマックスをきちんと持った、非常に分かりやすいエンターテイメント作品となっていたことだろう。
しかしヴァン・ダムはそうしない。それをしてしまったら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムという役者は終わってしまうからだ。綺麗なエンディングを持ち得てしまうからだ。
ヴァン・ダムは最後で、自分自身が映画の中のキャラクターとして完結してしまうことを拒否する。
それはまだヴァン・ダムが、ひとりの俳優として終わってはいないと宣言することと同義である。

「グラン・トリノ」がある意味でクリント・イーストウッドという役者の遺言であったのとは対照的に。
「レスラー」で、ミッキー・ロークが華麗なカムバックを声高に宣言したのとは違って。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムはまだ終わっちゃいないぜと、俺はまだ此処にいるんだぜと。
そう言いたかったのではないかなと私は思う。
まあさっきも言ったように私この人の作品1本も観てないんだけどね。

予想していたような、観る前に期待していたような、単純なメタフィクションストーリーではなかった。寧ろメタフィクションという様相を呈したフィクショナルな物語でありながら、リアルなジャン=クロード=ヴァン・ダムという俳優の声明であり、覚悟表明であった。私のような、アクションヒーロー全般にまったく関心を持っていない観客をして、彼に対して少なからぬ興味を持たせる そのきっかけとなるような作品だった。

この作品が彼にとって、俳優としての新たな世界を切り開く起爆剤となることを祈る。
願わくば次回作の主役を、セガールと競わずに済むように。



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