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くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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映画カテゴリーにしていたいくつかのエントリを移動して映画エントリ100件目から逃れるという卑怯な手段を取ることで有言不実行さを声高に自己主張。
おこんちわ。
三池エントリはもうちょっと後です。えへ。


んで観たよ映画。
今回は「誰も知らない」。
母親に捨てられた子供たちの陰惨な日々を淡々と描いた作品。
主演の柳良優弥がカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したことで一気に注目を集めた。

前知識として、実際にあった事件を元にしているということは聞いていたが、今回映画を観て改めてその事件を調べてみた。
こちら→巣鴨子供置き去り事件
リンク先には結構しんどい事件の詳細が書かれているので、やな人は見ない方が良い。

この作品を観てまず印象に残るのは、子供たちの母親・けい子(YOU)を含む、作品に登場する大人たちの描写である。
母親のけい子は非常に利己的な人間で、長男の明(柳良優弥)以外の子どもたちを世間から隠して育てている。
明含め、4人の子どもたちはいずれも出生届を出されていない。戸籍上は存在しない子どもたちだ。
明以外の子どもたちには「決して部屋から出てはいけない」と言い聞かせ、買い物や料理などはすべて明に任せ、自分は仕事に出ている。
時折明に「好きな人ができた」と告げてはふいと出て行き、暫くして帰ってくる。
子どもたちはそんな身勝手な母親を心底喜んで出迎える。
そんな母親である彼女は、しかし子どもと接している時はとても仲が良い。子どもたちも母親を愛している。
彼女は子どもたちを虐げたりはせず、母親というよりは友人であるかのように 一緒に遊んで一緒にご飯を食べ、一緒に眠る。そして恋人が出来るとたちまちあっさりと家を出てしまう。
学校に行きたいと言う長女や明にも、彼女は甘ったるい、舌足らずな声でこう返すだけだ。
「学校なんて行っても全然楽しくないよ。学校行かなくたって、偉くなった人いっぱいいるでしょお。それにお父さんがいない子は、学校でいじめられちゃうよ。やめなやめな、学校なんて。」


生活費が底をついても母親が帰って来ないので、明は何とかして弟妹の生活を支えようとする。
かつて母を捨てた自分たちの父親(子どもたちは皆父親が違う)に金を無心し、コンビニの店員に頼んで賞味期限切れの弁当を貰う。彼らはある程度、優しい大人たちと言える。この作品の中には、子ども達に対して声を荒げたり、手を上げたりする大人たちは出てこない。
母親、父親たちはもちろん、直接子どもたちに関係はしていない隣人たち―管理人夫婦、コンビニの店員、グラウンドを眺めていた明を野球に参加させてやる少年チームのコーチ。
みんな優しい。
何故なら彼らにとって、子どもたちはおおよそ「自分に関係のない可愛い生き物」だからであって、作品に登場する大人たちの誰ひとりとして、彼らの命に責任を持とうとはしていないからである。

作品を通して、カメラワークは非常に淡々と スローに子どもたちの生活を追っている。
温かみを感じる構図と色合いの中にしばしば大人たちは加わり、そして出て行く。
野良猫に餌をやる大人たち。しかし誰も野良猫を抱いて家に帰ろうとはしないのだ。
毎日、決められた時間にきちんと餌をやり、世話をしようとはしないのだ。

例えば家賃の催促に現れた大家が、子どもたちの暮らす部屋の中をつぶさに観察していれば。
コンビニの店員が福祉課に電話を一本かけていれば。
父親たちが警察に通報していれば。
そうすれば子どもたちだけの生活は終わっていた筈だ。
しかし そうはならない。

何故ならこの物語は、「誰も知らない」物語ではなく、「誰も知ろうとしなかった」物語だからである。
子どもたちと行動を共にしていた近所の高校生、紗希を除いて、誰ひとりとして子どもたちに関わろうとはしなかった物語。


ではこの物語は、大人たちの無責任な態度を言及する映画か?と言われると、違う。と言わざるを得ない。
暖かい、ゆったりとした、穏やかなカメラワークには 責任の所在を追及するような感情は見当たらない。
ラストカットは、道を歩く子どもたちの背中である。洗い過ぎてぼろぼろになった服を着て、垢で汚れた手を足を動かして、並んで歩く子どもたちを映している。
感じるのは野良猫の生命力。
死ぬその日までは、ただ生きる。飄々とした軽い足取り。


生きる喜びも、死ぬ悲しみも、捨てられた怒りも 何もかも全て生命からは遠いところにある。
彼らの悲惨な境遇や生活、そして訪れた悲劇さえも「まだ生きている」という事実だけは、決して否定出来ないのだ。子供だけが持つ、自分自身の力で命を保てない者だけが持つ、よるべのなさが漂うラストシーン。

決して楽しい映画ではないし、個人的には好きな映画ではない。
ただ必見である。そういう意味でお勧め。



関連エントリ
この監督の最新作はこちら。こっちは大好き。
壮絶ホームドラマ 「歩いても歩いても」


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