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くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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先日、あまりにも映画として

「狭い。」

と難癖つけながらも
ちょうどぽっかり時間が空いたので
観に行ってきました。

「ウォー・ダンス―響け僕らの鼓動」

wardance.jpg

ドキュメントなので
ネタバレも何もありませんが
まあしてるかしてねーかと言われたら




ウガンダ共和国は未だ
国内紛争のさなかにある。
反政府組織
「神の抵抗軍(the Lord's Resistance Army)」
による住民の殺害や襲撃は
2006年8月26日に政府間での
戦闘と敵対的宣伝の停止が
成立して以降、減ってはいるものの
完全には止んでいない。

LRAの行いで、特に国際的非難を受けているのは
子供たちに対して行われる犯罪である。
彼らは両親を殺害した上で子供を拉致し、
LRAの戦闘員として仕立て上げるために
暴力を加え(性的なものも含む)
農民や一般市民の殺害や放火、略奪、
子供の拉致などを強いている。

LRAの戦闘員のうち85%は
11歳から15歳の少年兵士。
言うまでもなく、LRAに拉致された
20,000人の子供たちである。

そんなウガンダの中でも、特に
紛争地域として恐れられる
ウガンダ北部に位置するパトンゴ。
そこには、6万人もの人間が生活する
避難民キャンプがある。
かつて運良くLRAから逃げのびた市民が
政府からの助力も得られず
全て自分たちの力によって
作り上げたキャンプだ。
そのキャンプ内にある
パトンゴ小学校の子供たちが、
ウガンダの全国音楽大会に初出場する。
この映画は、子供たちが
猛練習を経て、見事音楽大会の
大舞台に立つまでを収めた
ドキュメントである。


そもそも、この映画に
映画としての出来、不出来を問うのは
あまり意味のある事ではない。
と思う。
ただひたすらに
映像と音楽の美しさを享受し、
子供たちを支配している
あまりにも残酷な現実を背景に浮かび上がる
芸術の持つ圧倒的な力を
感じ取れば良い。

もちろん、考えることは可能である。
LRAのもたらす現状の悲惨さはもちろん
許されるべきものではないし
避難民キャンプを作る上で
まったく政府からの助力が無かった、
という点に関しても
無視されて良い訳はない。
その他、国内においての
ウガンダ北部に対する
偏見とでも言うべき認識の低さ
(LRAの指揮官であるジョゼフ・コニーが
パトンゴ避難民と同じく
アチョリ族の出身であることと、
LRAの掲げている国家基盤が
アチョリ族の伝統を基にしていることから)
―映画の中で、パトンゴ小学校の生徒が
他生徒から「人殺し」と言われた、と呟くシーンがある
―など。
この映画には、ウガンダの現況と
課題が山ほど詰め込まれている。

しかし、それらを考えるのは
映画を観た後でも間に合うのだから
観ている間はせめて
どっぷりとその映像美、音楽美に
浸かってしまった方が
より映画への理解も深まるのでは。
というか、ここを抜きにして
ただウガンダの抱える問題点、
これからの解決法についてのみ
考えるのでは
この映画を観る意義は無い。
ただ、観るべきである。
そして感じるべきである。

彼らには民族ごとに受け継がれた
伝統舞踊があり、
全国音楽大会には
各々の踊りと音楽を披露する
「民族伝統舞踊」の部がある。
パトンゴの子供たちが歌い、踊るのは
アチョリ族伝統の舞踊。
彼らを生み、ジョゼフ・コニーを生み、
LRAを生んだ土地の舞である。

文化は人々の歴史を内包して生きる。
歴史とは伝統であり、進歩であり、
また虐殺であり、戦争である。
美しいことばかりから生まれるものではない。
醜く悲しく、愚かしい人々の所業をも
その内側に秘めているからこそ
伝承する価値がある。
さながらパトンゴの子供たちが
両親や兄弟を目の前で殺され
LRAに拉致されて
命ぜられるがままに人を殺害し
それでもなお生きねばならない
辛い記憶、辛い生活から
目をそらす事無く、それでも
太陽に顔を向け
四肢を精一杯に伸ばして
躍動し、歌い踊る様が
涙が出る程美しく神々しいものとして
我々の目に映るが如く。である。

日本という国は、こと映画業界に関して言えば
非常に大衆的路線を重視する性格があり
悪く言えば娯楽映画に重点が置かれ過ぎている
きらいがある。
例えば世界情勢や政治経済等、
人々の周囲を取り巻く実際的、現実的な問題と
本当の意味で対峙しているヘビーな映画は
敬遠されがちな日本映画界において
こういった映画が上映されるというのは
非常に珍しいことであると言えるだろう。
だから観た方が良い。
きっと、今まで考えもしなかったような
色んな事柄や発想が
この映画を観終わった後
頭によぎる筈だから。


ウォー・ダンス 響け僕らの鼓動
公式サイト

東京都写真美術館ほか
大阪・沖縄でも
順次公開予定だそうです。

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こいつは面白そうだ
未見。でもトレイラー見たらかなり面白そう。
こっちではたぶんもう公開が終わってると思うので、DVD借りて見てみようかな。レビューサンクス!

ところで住所は一応メールの方に送っておきました。もしかしたら以前にメルフォで送ったのと同じかもしれないんだけど。

やもり 2008/11/13(Thu)07:32:14 編集
なかなかでしたよー
ドキュメントってあんま見なかったんですけど今まで。
でもフィクショナルなカルチャーにどっぷりはまって現実世界の諸問題や現象から遠ざかるのは
サブカル人の持つ性質で一番良くないもののうちの一つだなあと
強く感じました。
別に私サブカル人ってほどではないですけど。
もっと社会情勢にも敏感であらねばなりませんなあ。

住所ありがとございます!
以前いただいたのと同じだったかもしれないですが
こないだ教えてもらったの結構前なので
やや不安だったもんですからメールいただいて助かりました。
年賀状書いちゃおうかな!
(筆不精のくせに)

しる 2008/11/14(Fri)00:21:44 編集
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