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くしゃみしたらヘッドホンはずれた
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私が偏執的に愛して止まない
ウェス・アンダーソン総指揮の映画
「イカとクジラ」を見ました。
監督じゃないんだよ。
製作総指揮だよ。
監督は「ライフ・アクアティック」で
脚本を書いたノア・バウムバック。

私がこの監督(まあ監督じゃないけど)の作品をついつい観てしまうのは、家族というものの持つかっこ悪さをことさらにかっこ悪く、滑稽に描き出していながら常にその視点に愛を感じるからで、
大体どの作品でも家族間の喧嘩やら心のすれ違いが生じ、そしてそれらは大体がウェスアンダーソン的アイコンである
おとなげなくてかっこ悪くていい加減で無責任なバカ親父
が引き起こしたものなんだけど
そんなバカ親父が結局バカなりにどうにかしよう!とその現状を打破しよう!と思ってさらにバカな事態を引き起こしてしまったり
あと基本的に凄い自分勝手なので、素で何の悪気もなしに周囲の人間を小馬鹿にしたり不機嫌にさせてたりそういう事の連続なんだけど
それでもやっぱり憎めず、というか結局家族側がそのバカ親父を
許してしまうのは

基本的に悪気が無いこと
バカ親父が割りと滑稽だから見てると
怒る気持ちがうせてしまうってこと

あとやっぱり
家族だから だ。ろう。多分。

実際、家族に向ける怒りとか苛々って怒ってるうちにばかばかしくなって「いーよもう…」って感じでしぼんでしまうことが多い。(自分の場合)
そういう、リアルなトホホ感を描くのがとても上手い監督さんだ。
 

で、大抵のアンダーソン作品は前述の通り、スポットライトは大概「バカ親父」にあたってるんだけど
「イカとクジラ」では珍しく子供たちが主役である。
もちろん本作における「見栄っ張りで憎めないバカ親父」ポジションのバークマン家頭首バーナード(ジェフ・ダニエルズ)のバカ親父っぷりはそらもう相当なもんで
作家としての人気が妻のジョーン(ローラ・イニー)に劣っている事を認めようとしないわ
テニスでも卓球でも絶対に手を抜かず、相手が息子や妻であっても姑息なまでに勝ちに執着したり
30歳も年下の生徒(バーナードは作家なんだけど売れないため大学の講師をして食いつないでいるのだ)に手を出すわ その駄目っぷりは先人たるロイヤル・テネンバウム@ロイヤルテネンバウムズやスティーヴ・ズィスー@ライフアクアティックに引けを取らない。…今これ書いてて思い出したけど、ダージリン急行もまた子供たちが主人公であったと言えなくもないが、長兄のフランシスがバカ親父役も兼ねているので…まあそれは良いや。

アンダーソン作品の子供たちは、いずれも少なからずバカな親父のせいで何らかの傷を負っている。それは親父にとってはたわいのない一言だったり行動だったりするんだけど、子供にとってはとてつもないショックを与えるひとさしでもあるわけだが、いつまで経っても親という生き物はそういった過ちに気付かない。子供が直接親に言えば分かるし、一応その場は謝るけど、でも根本的なところが分かってないから結局似たような衝突を繰り返す。――これは、我々が繰り広げてきた、ごく普通の親子関係そのものではないか。

他のエントリでも言ったように、アンダーソンの映画はいつも 結局解決はしない。
ご大層な奇跡は起こらないし、親は相変わらず無神経な一言を子供たちに向け、エゴ丸出しの独占欲で以って縛り付けるし、子供の反論ははなから聞こうとしない。
ただ、そういった両親のおとなげない行動が、逆に子供たちを親から解放することになる。
そして子供たちは両親を理解する。「自分たちは、決して分かり合えないのだ」ということを理解する。
そして「彼らに悪気は無いのだ」ということも。
父も母も 兄も弟も、自分も 全て独立した一個の人間であるということを理解すると、子供たちが両親の些細な一言や行動に翻弄され 縛られる時期は終わりを告げる。それは絶対的存在である「父」「母」が、ただの大人の男と女に変わる瞬間でもある。
アンダーソンが描くのは、ある意味での「家族の断絶」ではあるが、それは同時に「家族の再生」でもあるのだ。それは全ての家族、全ての親と全ての子供たちが必ず通らねばならない通過儀礼でもある。

その過程、通過儀礼の過程を 「イカとクジラ」は子供視点から描いているため、非常に分かりやすく、また繊細で痛々しくもある。これほど子供たちが受けたショックをリアルに描いているアンダーソン作品は、今まで無かったように思う。(まあ監督作品じゃないんだけど)
何だかんだ書いてきましたが、とりあえず力強くお奨めです。と言っておこう。

そういえば割とどうでも良いけど
バーナードがメロメロになる文学部の学生を演じていたのがあのアンナ・パキンでした。
ピアノレッスン…!!

 

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